• 会社設立からレストラン開業まで

    公務員を辞めて、起業してやりたかったこと

    合同会社Arun Co.は、地元・石垣島出身の私、玻座真保幸が妻と二人で、令和5年4月に設立した会社です。私は若い頃は東京で生活していましたが、30代前半に帰郷してからは地元市役所で公務員として働きました。退職するまでの24年間は、都市計画、国際交流、商工、農政、市民協働、観光といった分野の企画部門に籍を置き、市役所職員という立場で、地元・石垣市のまちづくりに携わってきました。その後、令和5年3月末に一身上の都合で公務員としての職を辞することとなり、その後は、かねてから構想としてあたためていた、「農業」と「食」の魅力を独自のノウハウで発掘し、島の特色を生かした良質な観光コンテンツとして創造し、提供することを使命とする会社の設立に至りました。

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    合同会社Arun Co. 代表の玻座真保幸

    無限の可能性を持った、故郷・石垣島

    石垣島(市)の経済を支える主要産業は観光産業です。平成25年に現在の「新石垣空港」が開港してからは、東京、大阪、名古屋、福岡の4大都市から就航する定期直行便が着々と便数を増やし、近年は、コロナ期を除けば、年間100万人ほどの観光客が空路で訪れる国内有数の観光都市となり、さらにクルーズ船の寄港(海路)によるインバウンド(訪日外国人)観光客を加えると人口5万人の島に、25倍以上にも及ぶ人々が来訪する観光地に成長しています。

    石垣島は地図の上ではとても小さな島ですが、ハワイと同じ北緯24度線上に浮かぶ亜熱帯の島は、豊かな自然環境、優れた景観、洗練された特色ある文化、気候や地理的特徴が生み出す農畜水産物など、数多くの資源に恵まれた場所でもあります。島内では、そのような資源を活用したさまざまな経済活動が行われており、その一つ一つが大なり小なり、島を訪れる観光客をもてなし、魅力を伝える観光コンテンツとして存在すると同時に、島の暮らしや経済を支えています。

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    年間100万人以上の観光客が飛行機で来訪する石垣島(写真は、新石垣空港)

    農業が与えてくれるもの

    石垣島の気候が年々高温化しているなと感じます。もちろん、石垣島だけではなくて、地球の表面温度自体が、以前と比べてだいぶ高くなってきている気がします。そのせいかどうかはわかりませんが、かつては頻繁に石垣島にまともに襲来していた台風が、近年は、八重山辺りをかすめながら北上して、沖縄本島から九州、さらには本州へ向かう事例も度々起こっています。

     

    いずれにしても、この島にもたらされる気候的特徴と、元々の土(農地)が持っている性質などが合わさって、石垣島の農業に大きな影響を与えています。それは良い面もあり、時には嫌というほど悪い面もあります。石垣島で農業をするということは、その両方と共存していく覚悟を持つということだと思います。

     

    農業をやる上で、もう一つ忘れてはならない大事な視点・・・それは、当たり前と言えば当たり前ですが、収穫後はきちんと販売して売上(収入)を得るまでが農業だということです。石垣島は比較的農業に適している土地柄だと言えるので、ある程度勉強して取り組めば、次第にものを作ることができるようになります。でも、大事なことは、その作ったものを適正な価格で販売し、きちんとその対価を得るということです。売れないものを作るのは業(なりわい)ではなくて趣味になってしまいます。

     

    かつて、古巣の役所の先輩に、「農業は、いろんなことを知ってないとできないし、力仕事(労働)も伴う。だから、ものすごく頭と体を使う職業だよ。」と言われたことがありましたが、実際にそうだと思います。栽培技術は必須ですが、それ以外にも、気候、土壌、病害虫対策、簡易な施設の設置や補修、機械の扱い、長時間の労働など。数えればキリがないほど、大変なことばかりだと、つくづく感じます。

     

    石垣島だけではなく、だいたいどの地域、地区でも、農業に従事する人の数は年々減り続けているのが現状です。私が市役所にいる時、大抵聞こえてきたのは、「農業は大変、農業では食べていけないよ。」という嘆きとも愚痴とも言える声でした。やるのが大変な上に収入が少ないのであれば、一般論的には、担い手が少なくなるのもやむを得ないのかも知れません。

     

    でも、、、なんですが、私は、農業は、やはり大いにやる意義と価値がある活動だと思います。

     

    私は別に、日本の食を守るだとか、石垣島の農業をなんとかしたい、などと大げさなことを考えて農業に携わっているわけではありません。ただ、農業は、取り組み方次第ではまだまだ大きな可能性を秘めていると言えますし、何より、綺麗な空気を吸い、自然が奏でる心地よい音に耳を傾けながら目の前にある植物の面倒を見ることに集中していると、悩みやストレスから解放され、とても穏やかな心の状態を得ることができます。誤解を恐れずに言えば、それだけでも農業をする価値があると私は考えています。

     

    私たち二人がお待ちしています

    自己紹介というか、あいさつがだいぶ長くなってしまいましたが、私たちのいる農家レストラン ISHIGAKI Farm to Table ARUN の建物は、私たち夫婦が日常農業を営んでいる農園の敷地内にあります。もちろん、レストランがオープンしている間は、シェフである妻が調理して、私が皆さんのもとへ料理を運んでいきます。農産物の世話は、お休みの日や、レストランがクローズしている時間にこまめに行おうつもりです。

     

    タイ料理でも島料理でも、美味しいって思っていただけるメニューを準備して皆様が訪ねて来られるのを楽しみにお待ちしています。料理の味だけではなく、農業や石垣島の現状、時には、家庭や子育て、健康やペットの話など、世間話をしながら、確かな時間をご一緒に過ごせたらいいなと、心から待ち望んでいます。

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